無声映画のようなパフォーマンスと

異国の香り漂う音楽が奏でる

あるカフェの物語


少し昔の、とある下町のカフェ。そこは豊かでふくよかな空気に満ちていた。

ギャルソンと呼ばれる給仕、紳士気取りの常連客、そして自慢のお抱え楽団による音楽。

カフェに集う人々は、誰もがその自由を満喫した。

しかしそのカフェを取り巻く状況は少しづつ変わり始めた。

黒い外套をまとった男が我が物顔で街を闊歩し、職にあぶれた者はその足元を這いつくばった。

常連客の読む新聞には、連日物騒な記事が踊った。

その日もカフェの中の自由はまだ保たれていた。しかし、ギャルソンは気付いた。黒い外套をまとった男が、窓の外からこちらを覗いていることに。。。。


マイム音楽劇「ギャルソン!」

「ギャルソン!」は1930年代のとあるカフェを物語の舞台として設定しています。カフェの店主は、自らのことをフランス風にギャルソン(フランスのカフェやレストランで男性ウェイターを指す呼称)と称しています。そのカフェには、一杯のコーヒーを飲みながら作家や音楽家達が議論をかわしたり、会社勤めや学校通いに疲れた人々の溜まり場であったり、人と人が日常の中にあるカルチャーやアートに触れる場所として柔らかく呼吸していました。
そこに時代の暗雲が立ち込めます。1940年代、カフェに集う人々も戦地へとかり出されることになるのでした。
「ギャルソン!」は過去の物語でありながら、現代を生きる私達にも深く関係するテーマを内包しています。市井の人々の生活、文化、芸術が、その時代の権力や風潮によって失われてしまう…、このようなテーマ性と共に、マイムやダンスを始めとする身体表現が生演奏で奏でられる劇音楽と一体となり、様々な年代、境遇の観客をユーモアと共に劇世界へと誘い、演者と観客が一体となる時間を創り出します。

 

安曇野の文化発信拠点の一つである”チロル”はギャラリーやライブスペースを備えたカフェで、県内外のアーティスト達が発信する場所として注目を集めています。まさに「ギャルソン!」劇中のカフェと同様の役割を担う”チロル”。その環境を活かした特別演出版として、皆様に今企画を提案致します。

 

                                                                                                                                                     2017年12月CAVA丸山和彰